どうしてこの道を選んだの?仕事の内容は?私の職業を一人でも多く理解してもらえるようにまとめました。
2018年1月記事アップデート。
私はフランスで転職し、
前職と同じプロダクトデザイナーの仕事を続けています。
日本にいた時も、フランスに来てからも、
プロダクトデザイナーがどんな職業なのか、初めからピンとすぐ来る人はまずいません。
(フランスでデザイナーと言うと「ファッションデザイナー」「ジュエリーデザイナー」と思われがち)
フランスでの就職活動のとき、
プロダクトデザイナーを募集しているのにもかかわらず、
会社側が仕事内容を把握出来ていない場合もあり、
私が持っているスキルをどう会社に貢献できるのかを説明をするのに苦労しました。
普段周りに聞かれる一般的な質問がこちら。
- 何でプロダクトデザイナーになろうと思ったの?
- 理系なの?
- 学校ではどんな勉強を?
- どんな仕事内容なのか?
- 職場は男性が多い?
今回のブログには、この質問に対しての答えを自分の体験談を元にまとめました。
何故プロダクトデザイナーになろうと思ったの?
子供の頃から物を作ること(特に裁縫♡)や絵を描くことが好きな方でしたが、
最初からデザインを目指していたわけではありません。
一般的に進路を決める高校時代は、普通科の進学校に通っていました。
学校の偏差値は高く、周りは医学部・薬学部・工学部・文学部希望者ばかり。
芸術系大学へ進学希望の学生はほとんどいませんでした。
優秀な学生が多く、自分が好きな科目(当時数学が得意だった)をどれだけ頑張っても、到底勝てない学生が大勢いる環境でした^^;
その学校では、2年生の夏までに高校3年間分全ての科目を終了し、
残りは全て入試対策に力を注ぐ学校だったため、その前までに進路をある程度決めておく必要がありました。
元々「周りと同じことをやること」が嫌いな私は、
「皆がやらないこと・自分が得意なことで頑張ろう」と心に決め、
高校2年の夏の面談で、デザイン学部を目指すことを伝え、準備を開始。
デザインを学べる大学を調べたところ、幸運にも県内の国公立大学がありました。
(県外の大学と私立を受ける気は一切なかった)
その時、漠然としていた「デザイン学部へ進学」が「プロダクトを学ぶ」とハッキリしたのは、
画塾に通い出して数ヶ月経った後でした。
その出来事のことは今でも覚えているのですが、
いつものデッサンの評価時間の後、画塾の先生が私を呼び出しこう言いました。
「君がプロダクトデザイナーになったら面白いだろうなぁ」と。
この言葉がなかったら今はきっと他の分野にいたかもしれません。
そう、私をこの道に導いた先生こそが「元プロダクトデザイナー」だったんです。
仕事内容・やりがいを聞き、これなら自分が得意なこと(物を作る・数学が好き)が活かせる!プロダクトにしよう!
と割とすぐに決めました。
決め手となった先生の言葉は、
- プロダクトは1点モノのアートと違い、自分が図面を引いたものが何万と生産され、消費者の生活に寄り添い使われること。
- 現状を解決し、時代が求めているもの生み出すこと。
その2つの魅力は、実際に今の私の仕事を続けるモチベーションになっています^^
プロダクトデザインは理系?
私の学んだ学科は建築も含むデザイン工学科でした。
入学試験では、理系科目(数学・物理または化学)が重視され、
入学してからも、材料力学や製品設計で図面を扱う授業の履修が必須でした。
現在も3Dのデータを作成する際はもちろん数字を扱いますし、
立体的にデザインを考えなければならないため、数字に強い人の方が仕事は楽しいと思います。
大学ではどんな勉強をする?
機械設備を利用し、手を動かして実際に製品製作を行う授業はもちろん、
デザインの基礎となる現状問題把握/課題発見/ソリューション提案など、コンセプト立案を学ぶ授業も多くありました。
授業の中には、企業や地域とコラボし商品開発を行う実践的な授業もありましたよ!
就職先は?
プロダクトデザインの仕事は幅広いです。
例えば、私の周りのプロダクトデザイナーだけでも、
- 自動車(周辺アクセサリーなど)電車、飛行機
- 交通機関(案内板、改札など)
- 家電
- 家具、インテリア(照明など)
- 医療機器
- 事務用品
- 化粧品
- ジュエリー
- 食器、カトラリー
- スポーツ用品
これだけ異なる職業があります。
プロダクトデザインは華のある仕事?実際の業務とは
デザインといえば、絵を描いて色を扱う仕事、デザイナーに任せればかっこいいものが出来上がる!と
そんなイメージがある仕事ですが、実際はどうでしょう?
1.マーケティング部と打ち合わせ(商品のコンセプトやターゲット層の確認など)
2.デザイン調査(街に出たり、書籍やネットでトレンドをチェック、時にチームでデザイン合宿も行う)
3.ディスカッション(チーム内での意見交換)
4.形の方向決めとアイデアスケッチ(個人ワーク)
5.ディスカッション、レンダリングするスケッチを選ぶ
6.レンダリング(スケッチを具体的に2Dソフトでレンダリングをする)
7.チーム内コンペ(デザイン部でアイデアを絞る)
8.3Dソフトを使って、図面を作成
9.モックアップ作成(モックアップ屋さんにデータ提出・生地チェック・調色を行う)
10.社内または社外調査コンペ(他部署を交えてコンペを行う。調査会社を利用し社外コンペをする場合もあり)
私が勤めていた会社のデザイン決めは100%コンペ式でした。
コンペで勝ち抜かないと仕事がありません。
もちろん年齢は関係なく、先輩の中にはコンペで通らずずっとデザイン提案までしか進めない人も><
コンペは部署内→部署外→社外と、プロジェクトが進むにつれ規模が大きくなり、
特に調査会社を利用した一般コンペ(一般の方を呼びアンケート調査をする)は
ミラールームの裏で自分のデザインがどのような評価を受けるのか、直接聞けるチャンスもありました。(とても緊張します^^;)
1.設計部にデザインデータを提出
2.生産ラインに流すための設計データへ変換(問題がある場合は設計者と相談しながらデザインデータを修正)
3.材料指定図・カラー指定図を工場に送る
4.色板のレイヤー変更(お金がかけれないパーツの場合レイヤー数を少なくする必要があります。
5.カラーチェックを工場と行う(工場が海外の場合、現地で調色をする場合もある)
工場へ提出する指定書は、とても厳重に取り扱われ、
その作成や色見本の番号などの管理もデザイナーが管理していました。
工場が海外の場合は、英語でのやり取り(メール7割)でした。
ここからは、プロジェクトがマーケティング・プロモーション部の仕事に移るので、
デザイン部は開発時より時間に余裕ができます。
ですが、一息ついている暇もなくすぐに別商品の開発スタート。↑「コンセプト・デザイン過程」に戻ります。
だいたい6ヶ月サイクルでした。
デザインの統一のため、担当した商品のパッケージやガイドラインの作成を行う場合もあります。
さらには、デザイナーとしてインタビューを受けたり、
プロモーション活動の一環でイベントに参加し、壇上に立って話すこともあります。
以上のように、コンセプト提案から生産ラインに入って、店頭に置かれるまで、
技術者や販売担当者など関連スタッフと協力しながら、ひとつの製品の完成に向けて深く携わります。
プロダクトデザイナーの職業病は?
私がこれは職業病だな〜と思うのは、
普段の生活で触れる製品の金型構成や曲面・角Rの大きさ、パーツ同士の隙間が気になること。
型を外した方向や成型時に付いてしまったラインも目に入ってきます。
値段が高いのに、見た目だけ雰囲気オシャレにしている製品のアラをすぐみつけてしまうので、買い物に時間がかかります。
他にも業務で3D図面を引いている期間は、
視界に入ってくるもの全てがどういうサーフェース構成になっているのか考えてしまいます。
そして納得のいく図面が引けない時、夢にもでてきます。
夢で解決して次の日にうまくできた!みたいなことがあればいいのですが、
今のところ夢でうなされるだけですね(笑)
さらに、部品の色の違いに敏感です。特に白色。。
私たちプロダクトデザイナーは、調色で色味の変化に注意しながら指示をします。
(例えば、下地に使われている素材が外の塗装に影響する加減なども含めて)
なので、日常で使う家電製品の部品ごとの色味がすこーしでも違うと気持ち悪く感じます。
青味に触れているとか赤みが強いとか、かなり微妙な違いも気になります。
職場は男性が多いのか?
答えはYES。8割男性です。
学生時代は男女半々か、男性の方が少し多めの割合だったのが、
社会人になると女性の比率はかなり下がります。
プロダクトデザインを専攻していても、就職先は別のジャンルを選ぶ人もいるし、
就職しても結婚出産して離職ケースも多いためです。
以前の会社も20人チームの中に私ともう一人の先輩2人だけでした。
また入社当初はプロダクトデザイナーとしての採用だったけれど、
上記のように開発過程全て関わるため、
産休後、パートタイマーで時間的に難しくなってしまい、
別の部門にまわされてしまった先輩もいました。
プロダクトデザイナーのフランスでの需要は?
この仕事を始めて1年が経とうとしていますが、
Linkedinや以前登録していたリクルートサイトから、
オファーのメールをいただきます。
日本企業での勤務経験があることや受賞歴は、アピールポイントになり、
さらに「現在仕事をしている」ことが何より良い印象に映るようです。
※職探しをしている時はオファーなんてこなかったのに、、。
– – –
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
なるべくわかりやすい言葉で書いたつもりですが、
専門用語や理解しにくい表現があるかもしれません(ごめんなさい)
プロダクトデザイナーに求められるのは、
デザインスキルはもちろん、他部署の人とのコミュニケーション能力や、現状把握力、提案力、総合のスキルです。
それは海外に出ても同じこと。
それらのスキルにプラスして、フランス語が出来なくてはいけません。
泥臭い作業も多いですが、自分のデザインした製品が世に出て、
使っている人を外で見かけたり、雑誌に特集を組んでもらえたり、
会社が以前より一歩前進できたりすると、あぁ頑張っててよかったな〜と思います。
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